西洋のテクニカル分析の始祖「ダウ理論」。

ダウ理論とは、相場に存在するトレンドの性質を説明したものです。

100年にもわたり機能した実績からテクニカルアナリストのほとんどはダウ理論を知っています。

概要対象者:ダウ理論を知らないFX・株の初心者

  • ダウ理論の概要(定義・6つの法則・特徴)
  • ダウ理論を活用した手法
  • ダウ理論の本質

fxで使われるダウ理論とは?わかりやすく簡単に解説

ダウ理論は、価格のトレンドを重視した理論で、どこで買うかを判断するうえでの前提の考え方になります。

今では有名な経済誌であるWSJ創業者ダウさんが提唱した、株式市場に存在するトレンドなどについての6つの法則から成り立っています。

ダウ理論の基本!6つの法則を簡単に説明
  1. チャート分析を極めれば全てが分かる。
  2. トレンドは短期・中期・長期の3種類からできている。
  3. 長期トレンドは始まり・途中・終わりの3つの段階に分けられる。
  4. トレンドは2つの市場で確認する。
  5. トレンドは出来高も確認したほうが安心。
  6. トレンドは明確な反転シグナルが出るまで続く。

FXや先物などでも使われている理由として、実は現在の「テクニカル分析」の手法の数々は、ダウ理論を発表した20世紀に発生しています。

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ダウ理論はテクニカル分析の始祖であるといっても過言ではありません。

だからこそ、今後どんなに洗練されたテクニカル分析の土台にはダウ理論が前提として存在するのです。

動画で理解したい人向けに、ダウ理論の分かりやすい解説動画もご紹介しましょう。

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ちなみに、動画でダウ理論について解説している小次郎講師ですが、TradingViewと呼ばれるツールをオススメしています。
非常に使いやすいので、まだトレードツールを活用していない人はぜひ利用しましょう。

ダウ理論の6つの法則

ダウ理論には、6つの法則が説明されています。

ダウ理論第1法則:チャート分析を極めれば全てが分かる

The Market Discounts Everything
(価格はすべての事象を織り込む)

テクニカル分析において、価格はファンダメンタルズの影響も含めて、すべてを織り込んでいます

テクニカルとファンダメンタルズ
テクニカル分析
チャートだけをみて判断すること
ファンダメンタルズ分析
ニュースなど出来事をみて判断すること
A

例えば、株で良いニュースがあったら株を買いたくなりませんか?

多くの人が同じように思って購入すると、価格は上昇します。

逆に悪いニュースがあれば、価格は下落しますよね。

つまり、自然災害などのファンダメンタル的な要因も全部織り込まれてチャートは値動きします。

とはいえ、ファンダメンタル的要因が原因なら、ファンダメンタル分析の方がテクニカル分析よりも優れているのではないかと思う人もいるかもしれません。

特に機関投資家などの大口は、個人と比較して情報収集能力が高いです。当然ながら、組織の力やノウハウ、人脈が違いますよね。

その分、機関投資家のほうがファンダメンタル的に有利に投資を行うことができるので、長期的でもないかぎり勝ち目は薄いでしょう。

ただ、大口には大口の弱点があります。

一つは成果を出さなければならないこと、もう一つは大口は扱うお金の量が非常に多いことです。

前者はそのため長期的な投資ができないことにつながるのですが、今回は省略します。

後者の扱うお金の量が非常に多いということは、そう簡単には身動きができないということです。

少しでも動向があると市場に影響を与えてしまうため、隠れて仕込むことができません。

その結果、大口がとっておき良い情報を手に入れて事前に仕込んでおこうとすると、どうしてもチャートにシグナルとして現れてしまいます

逆をいえば、情報がなくてもチャートを分析しておけば、仕込まれているかどうかを判断することができるでしょう。

このチャートに現れる兆候を分析していくのがテクニカル分析です。つまり、テクニカル分析をするだけで、結果的にファンダメンタルを含めた判断ができるといえます。

ダウ理論第2法則:トレンドは短期・中期・長期の3種類からできている

There are 3 kinds of market trends

(トレンドは3種類からなっている)

ダウ理論では、ジグザクに動きつつも一定の方向に向かっているものをトレンドと呼びました。

上昇トレンドの中でも「常に上昇」とはいかず、下がっているときもありますよね。

ダウはトレンドがジグザグ動く理由をを長期・中期・短期3つの期間があるからだと考えました。

トレンドの種類
長期トレンド(大トレンド)
1年以上のトレンドで月足や週足で確認する。
中期トレンド(中トレンド)
1~3ヶ月程度のトレンドで行き過ぎた長期トレンドを調整する動きをする。月足や週足で確認する。
短期トレンド(小トレンド)
1~3週間程度のトレンドで行き過ぎた中期トレンドを調整する動きをする。日足や4時間足で確認する。

中期トレンドは行き過ぎた長期トレンドを調整するために長期トレンドの逆方向、短期トレンドは行き過ぎた中期トレンドを調整するために中期トレンドの逆方向になり3分の1から3分の2に渡るまでの調整が行われ、50%となることが一番多いです。

相場でよく言われる大局というのは、長期トレンドをさします。

なので、初心者はできるだけ長期トレンドに沿った形でのトレードを意識しましょう。

ダウ理論第3法則:長期トレンドは始まり・途中・終わりの3つの段階に分けられる。

Primary trends are split into 3 phases
(長期トレンドには3つの段階がある)

ダウは、長期トレンドを先行期」「追随期」「利食い期」3段階に分類しました。

先行期 トレンドが始まる段階
追随期 本格的にトレンドにしたがって動いている段階
利食い期 トレンドが終わりそうな段階

第1段階:先行期(トレンドが始まる段階)

先行期はトレンドが明確には生じていない段階で、多くの参加者が迷っている状況。

先行期は主に、有利な情報を掴んでいるプロの投資家がポジションを持ちます

このタイミングでは市場に情報が出回っていないため、前のトレンドが終わったのかどうかの判断は非常に難しいため、一般的な投資家が参入するには難しいです。

単なる戻しや値動きの判別がつかないため、情報の取得に有利である機関投資家といった大口がこのタイミングで仕込んでいる段階といえるでしょう。

第2段階:追随期

追随期はトレンドが生じていることを認識できる段階です。

テクニカル分析を行う投資家の大半がこのタイミングで参加して利益を出しています。大口の仕込みがだいたい終わったことで、購入している兆候が現れているのでテクニカル分析をすることによって判別することができます。

個人投資家で儲けている人は8割以上はこのタイミングで参入しているといえます。

多くの投資家が一斉に参入することで急騰や急落が生じる段階ともいえるでしょう。

ダウ理論では、このタイミングでのエントリーを推奨しています。

明確なトレンドが形成されてからトレードするため利益の最大まで取ることができないですが、頭とシッポはくれてやれという格言があるように欲張りすぎてはダメです。

残りの8割も利益をとれたら十分でしょう。

第3段階:利食い期

ダウは一つのトレンドの終盤を利食い期と分析しました。

利食い期では、各種メディアは強気に報道します。例えば、2018年末のビットコインについて多くの新聞でとりあげられていましたよね。このときの市場は利食い期だったのです。

当然、メディアでは上昇した原因となる要因について報道しますよね。この要因は一部の投資家が先行期の際に既に入手していたものです。情報が大衆のものとなり、全員に情報が行き渡ります。

当然事実なので説得力が高いです。結果として、初心者の投資家が今上がっているから買おうというように参入してきます。

しかし、既に先行期や追随期で既に参入しているプレイヤーは撤退、すなわち利食いを行います。なぜなら、先行期で入手していた情報は既に出がらし状態になっているからです。つまり、これ以上情報の価値がないわけです。

追従期までに参入していた投資家が抜けていくことで資金が減少する一方で、初心者投資家は思った以上に上がらないことで同様に撤退する人が出てきます。その結果、トレンドは終焉を迎えるというのが利食い期というわけです。

このタイミングで参入した、投資家は間違いなく損をするのは上記の経緯が原因です。特に投資が初めての人が損をしたというのは8割がたこのタイミングで参入しているからです。

だから、「買ったら下がった。売ったら上がった」という声が少なくないわけです。

トレンドが「先行期」「追随期」「利食い期」「先行期」「追随期」・・・、3つの段階がぐるぐる回っているのです。

これを発展させたのがエリオット波動論です。

ダウ理論第4法則:トレンドは2つの市場で確認する

Indices must confirm each other
(トレンドは2つの市場で確認する)

市場は他の市場と密接に関わっています

例えば、為替は輸出入に関わってきますし、法定通貨の価格は仮想通貨に影響を与えます。

より分かりやすく例えば、ある工業株が売上増加という好条件で上昇したとします。

売上が増加したということは商品を買う人がいるわけですよね。工業製品は簡単に持ち運びができない以上、輸送する必要性があります。であれば、輸送する量も増えるわけですから、輸送関係の会社の売上も上がるわけです。

この情報は断片的に各投資家に入手されます。

〇〇会社の業績がいいらしいだとか、〇〇運輸の輸送車をよく見かけるようになっただとか。

これらの情報から投資家は先行期に投資をするわけですが、徐々に同じ判断をする人が増えてくることによってトレンドが生じます。

生じるトレンド当然ながら工業株だけでなく、輸送株も対象となります。そのため、本物のトレンドは複数の市場にも生じるものです。

一つの市場にのみ生じている場合は騙しの可能性があります。つまり、仕手屋が多くの投資資金を利用して市場を操作している可能性があるということです。

しかし、複数の市場に影響を与えるには必要な投資金額が増えるため仕手屋が影響を与えるのは難しくなります。そのため、複数の市場で確認されるトレンドこそが本物のトレンドといえるでしょう。

もちろん、単純にバブルが崩壊だったり、加熱した市場の調整が生じている場合もあるので、一概に仕手が生じているとはいえませんが、ダウは複数の市場に生じていないトレンドはトレンドではないと断じています。

そのため、トレンドかどうかを判断する際には複数の市場を確認しましょう

ダウ理論第5法則:トレンドは出来高も確認したほうが安心。

Volume should confirm the price
(トレンドは出来高でも確認できなければならない)

ダウ氏はトレンドを判断するとき、終値を最重要視する一方で、出来高も判断材料にたるものだとしていました。

ダウ理論では、出来高はトレンドに追随しているものだとしています。

つまり、上昇トレンドのときは価格が上昇しているときに出来高が増加し、価格が下落しているさいの出来高は減少します。
一方で、下落トレンドのときだと価格が下落しているさいに出来高が増加し、価格が上昇しているときに出来高が増加します。

経験が豊富なトレーダーであれば、本当かどうかを警戒して出来高をしっかりと確認しているわけです。

つまり、第5のダウ理論の使い方を簡単にまとめると、チャートをみるときは値動きだけでなく出来高についても、しっかりとみておく必要があるのです。

ダウ理論第6法則:トレンドは明確な反転シグナルが出るまで継続する

Trends persist until there is a clear reversal
(トレンドは明確な反転シグナルが出るまで継続する)

あるトレンドが形成されると持続する可能性が高いとダウは仮定しました。

実際にチャートをみてみましょう。

上のチャートをみればわかりますが、緑色のゾーンの上昇トレンドでは上がる傾向にあり、逆に赤色のゾーンの下降トレンドでは下がる傾向にあります。

チャートの中では短いスパンの中で高かった値段を緑の点線、低かった値段を赤の点線で示しています。

緑の点線と赤の点線が、上昇トレンドでは常に上に移動しており、逆に下降トレンドでは下に移動しているのがわかりますよね。

では、何をもって反転したといえるのかというと…実は誰にも分かりません

反転を判断するのに抵抗線、支持線、トレンドライン、移動平均など各種のテクニカル分析が判断材料となります。テクニカル分析を行うトレーダーはこの反転シグナルを毎日血眼になって探しているわけです。

ダウ理論の基本手法!使い方をわかりやすく解説

ダウ理論の本質

6つの法則から分かるようにダウ理論の本質として、相場にはトレンドという現象が存在して、トレンドにどのような性質があるのかについて説明した理論であると言えます。

だからこそ、相場のおおまかな流れを把握するのに使えます

一方で、ダウ理論はトレンドの存在しない、レンジ相場では機能しません。

あくまでもトレンドを把握する理論がダウ理論なのです。

ダウ理論の使い方①:エントリーポイントの判断

ダウ理論の第3法則で長期トレンドは3段階に分けられますが、なかでも途中の追随期でエントリーすることで少ないリスクで利益を稼ぐことができます。

先行期ではダマシであるケースも多いからです。

多くのトレーダーは先行期では本当にトレンドが発生したのかを疑いながら慎重に様子見しており、パワーが不十分で下落することも少なくありません。

追随期になると、明確にトレンドがあると判断してトレンドに乗り遅れまいと買い始めるトレーダーが増加するので、トレンドの勢いが強くなります。

そして利食い期では多くのトレーダーが利益確定のためにポジションを手放すので、トレンドがだんだん弱くなり下落しやすくなります。

追随期でも十分に利益をだせるので、いまトレンドのフェーズがどこにあるのかを見極めたうえでエントリーしましょう。

ダウ理論の使い方②:トレンドが継続しているかの把握

ダウ理論第6法則で明確なシグナルがあるまでトレンドが継続するとありましたが、反転シグナルが出てきたら利益を確定しましょう。

高値を更新している限りは上昇トレンドが継続して、安値を切り下げている限りは下落トレンドが継続しているものとみなします。

逆に上昇トレンドの際に直近の安値を下回った場合や、下落トレンドで高値が更新された場合はトレンドが転換した可能性があり、投資をひかえたほうが無難です。

反転シグナルがでたら、利益確定を検討してください。

ダウ理論の使い方③:ダマシ回避

出来高と複数市場を確認することでダマシを回避することができます。

ダウ理論の第5法則で、トレンドを見極めるのに出来高も確認するべきという内容がありましたよね。

ダマシを行おうとするトレーダーにも所持金の限界があるのであまり出来高を積むことができません。

したがって、出来高が多くなればなるほど、トレンドの信頼性が高まります。

また、ダウ理論の第4法則から、似たような市場(株式なら同一業種)でも同様の動きをしている場合は業界全体の大きな流れによってトレンドが形成されている可能性が高いです。

ダマシを行う人も全ての市場でワナを設置しきれないので、こちらも確認できた市場が多ければ多いほど安心。

トレンドが生じているのかどうかダマシを回避するために、出来高が増加しているかどうか複数の市場で確認しましょう。

ダウ理論だけでは勝てない

不確定要素の多い相場において、ダウ理論だけを盲信してトレードすると失敗する可能性が高くなります。

エントリーポイントや損切ポイントなどはダウ理論だけでは把握することができず、「ダウ理論だけで勝てる」というのは大げさでしょう。

本当のダウ理論の使い方としては、相場環境を把握したうえで、エントリーポイント、損切り、利食いポイントを絞っていくがオススメ。

あくまでも自分がどういうトレンドを狙っているかを計画したうえで、明確なシグナルが発生するのをまちましょう。

インジケーターと組み合わせて、初めてダウ理論は勝率をあげることにつながるのです。

もともと、ダウ自身も最大の利益をとるというよりも、トレンドを確認してから高い確率で勝ちに行くという考え方でした。

なので、まずはダウ理論をマスターして、適度なところで満足するのが大事です。

株やFXをするならダウ理論を使いこなそう

最後にもう一度、ダウ理論による6つの法則をおさらいしましょう。

ダウ理論の6つの基本理念
  1. 市場はすべての事象を織り込む
  2. トレンドは3種類からなっている
  3. 大トレンドには3つの段階がある
  4. トレンドは2つの市場で確認する
  5. トレンドは出来高でも確認できる
  6. トレンドは明確な反転シグナルが出るまで継続する

上記の理論は一見簡単なように見えますが、手軽に身につくものではありません。

それでも知っておくだけでトレードに勝ちやすくなるという実感は得られるでしょう。

実際にほとんどのテクニカル分析はダウ理論の6つの法則を深掘りしたものがほとんど。

テクニカル分析の基本は、全てはダウ理論から始まるといっても過言ではありません。

ダウ理論ではトレンドという言葉について特に説明されていますが、下記の記事でトレンドについて詳しくまとめているのでご参考ください。