使えない勝てないサイクル理論を覆す種類、数え方、使い方

サイクル理論は、相場の大局を把握するのに効果的な手法

サイクル理論では勝てないという人にむけて、わかりやすく解説していきます。

概要対象者:サイクル理論が使えないテクニカル分析中級者

  • サイクル理論の概要(ルール)
  • サイクル理論のサイクルの種類
  • ライト・トランスレーションとレフト・トランスレーションの使い方
  • サイクル理論の使い方・数え方

サイクル理論とは?

サイクル理論とは、テクニカル分析の一つで、相場で上下するサイクルの周期性を分析して「時間軸」で値動きを予測する理論です。

「どのように(形)」「どこまで(価格)」だけでなく、「いつ(時間)」動くのか予測するのに活用できるでしょう。

サイクル理論では、安値のことを「谷」とよび、高値のことを「山」と呼びます。

谷と谷をつなぎ合わせる、つまり「安値から安値を1サイクルの周期」とするのが一般的。

サイクル理論のルール

サイクル理論の4原則
  1. 総和の原則…値動きは現在のサイクルをすべて足し合わせたものになる。
  2. 調和の原則…次に大きなサイクルは「2」の倍数の範囲になる。
  3. 一致の原則…異なる大きさのサイクルでも底や山は一致する。
  4. 比例の原則…サイクルの値動きが大きければ期間も比例して長くなる。

サイクル理論の2原理

  1. 多様性の原理…現実には色々なサイクルがある。
  2. 名目性の原理…全ての市場に有効なサイクルが存在する。

サイクル理論における7種類のサイクル

サイクル理論では、大きく7種類に分類されます。

サイクル理論における7種類のサイクル
  • 長期サイクル(景気循環サイクル):周期40日〜
  • 中間サイクル(季節サイクル):12〜20ヶ月
  • プライマリーサイクル:18〜30週
  • メジャーサイクル:20〜25日
  • トレーディングサイクル:10〜18日
  • 4Hサイクル:4Hサイクル
  • 1dayサイクル:1日

    一般的に景気循環サイクルと季節サイクルが市場の長期トレンドに影響します。

    そのため、季節サイクル以上は市場の大まかな流れを判断する最初に利用し、普段のトレードでは「プライマリーサイクル」「メジャーサイクル」「4Hサイクル」をメインで利用するトレーダーが多いです。

    サイクル理論の使い方

    サイクル理論を活用することで、エントリーや決済のポイントに参考になります。

    AA

    トランスレーションとサイクルの数え方の基本がわかれば、サイクル理論を活用できるようになるので、それぞれ解説を進めていきますね。

    トレンスレーションとは?

    トランスレーション(変形)とは、サイクルの形状です。

    サイクル理論におけるパターン分析のようなもの。

    サイクルは、スタート地点である始点(安値)から終了地点である終点(安値)までの形から、次の2つのパターンになります。

    サイクルのトランスレーション
    • ライト・トランスレーション(買いシグナル)
    • レフト・トランスレーション(売りシグナル)

    ライトトランスレーションとは?

    ライトトランスレーション

    ライトトランスレーションとは、始点の安値よりも終点の安値のほうが高くなるサイクルのパターンです。

    天井が右寄りになることからライト(右)とよばれ、サイクルが終わると始点よりも高くなります。

    ライトトランスレーションは、天井をつけるのが遅いということで上昇トレンドの可能性が高いので、ロング(買い)の優位性が高いでしょう。

    レフトトレンスレーションとは?

    レフトトランスレーション

    レフトトランスレーションとは、始点の安値よりも終点の安値のほうが低くなるサイクルのパターンです。

    天井が左寄りになることからレフト(左)とよばれ、サイクルが終わると始点よりも安くなります。

    レフトトランスレーションは、天井の出現が早く下落トレンドの可能性がたかいので、ショート(売り)の優位性が高いでしょう。

    サイクルの数え方

    サイクルは基本的にローソク足で数えます。

    周期 時間足 本数
    景気循環サイクル 月足 40本〜
    季節サイクル 月足 24〜40本前後
    プライマリーサイクル 週足 60〜80本前後
    メジャーサイクル 日足 35〜45本前後
    4Hサイクル 4時間足 15〜21本前後

    なお、表の本数に当てはまる確率は80%で、必ずしも規則的にサイクルが形成されるわけではないので注意しましょう。

    サイクル理論でエントリーポイントを見つける

    サイクル理論のトランスレーションと数え方について、理解すればエントリーポイントを見つけるのに役立ちます。

    上昇トレンドにおけるサイクル理論の使い方
    1. 安値をつけた足から一つのサイクルを見つける。
    2. メジャーサイクルであれば、始点から15本〜25本で天井ができていないことを確認
    3. ライトトランスレーションの可能性が高いので、次の安値でエントリー

    ライトトランスレーションは、サイクルの右側に天井が来ますよね。

    したがって、メジャーサイクルの始点から半分以上経過しても高値を更新し続ける場合は、ライトトランスレーションの可能性が高いと判断できます。

    したがって、次にできた安値でエントリーすれば天井で売れる可能性が高いわけです。

    サイクル理論で決済ポイントを見つける

    決済は、エントリーと比較してシンプルなので簡単。

    サイクルが崩れたと判断できたタイミングで決済をしていきましょう。

    サイクル崩れのシグナル
    • ライトトランスレーション:安値を更新した時点
    • レフトトランスレーション:高値を更新した時点

    しっかり分析して焦らずトレードしてください。

    サイクル理論は長期サイクルを基準に

    なお、サイクルは長期サイクルから分析をしていきましょう。

    なぜなら、長期サイクルの方が優位性が高く信頼できるサイクルだからです。

    そして、一つの長期サイクルのなかに短いサイクルが複数存在するので、長期サイクルにおけるトレンドを確認してから順に一つずつ小さいサイクルに移ってください。

    AA

    長期サイクルについて説明して行きますね。

    長期サイクル(景気循環サイクル)の種類

    長期サイクル(景気循環サイクル)は、さらに4種類に分類されます。

    サイクル名 コンドラチェフ クズネッツ ジュグラー キチン
    周期 50年前後 20年前後 10年前後 40ヶ月
    要因 技術革新 建築物建替 設備投資 在庫投資

    景気循環とは、経済活動が活発になる「好景気」と、収縮する「不景気」が交互に発生する周期的なサイクルのことをいいます。

    コンドラチェフ・サイクル

    コンドラチェフ・サイクルは、技術革新が要因となって発生するとする有名な長期の景気循環サイクルです。

    50年前後を1つの周期としたサイクルのことで、イギリスの産業革命から発生しています。

    第一波 第二波 第三波 第四波 第五波
    サイクル 1780~1840 1840~1890 1890~1940 1940〜1990 1990〜
    技術 紡績・鉄道 鉄鋼 自動車 家電 IT

    なお、技術革新だけでなく、政治や外交、戦争(軍事)、国際秩序の変更なども理由だと考える説もあります。

    クズネッツ・サイクル

    クズネッツ・サイクルは、建設需要が要因となって発生するサイクルで、20年前後を一つのサイクルとしています。

    20年というのは、子が親になるまでの大体の期間で、アメリカでは特に子供が大人になると一人暮らしを始めます。

    新しい世代が経済活動に加わることで、住宅需要が増えたり、価値観が変わったりすることから、住宅や商工業施設の建て替えといった需要が発生して一つの景気循環を生み出します。

    なお、国際収支や輸出が影響しているという考えもあります。

    ジュグラー・サイクル

    ジュグラー・サイクルとは、設備投資が要因となって発生する、10年前後を1つの周期とした景気循環サイクルです。

    企業の機械などの設備の耐用年数や更新時期は、平均で10年であることから発生します。

    企業が生産設備の増設やシステム更新する時期になると、設備の開発を行うメーカーの売上が増加しますよね。

    発注が多くなって人手不足になることから、労働者の賃金も上がります。

    もちろん、企業の設備への投資が落ち着くと、メーカーの売上が減少するので労働者の賃金が下がりますよね。

    結果として、設備への投資によって一つのサイクルが生まれることから設備投資循環とも呼ばれます。

    キチン・サイクル

    キチン・サイクルとは、在庫投資が要因となって発生する景気循環のサイクルです。

    企業は、在庫残高が適正と考える水準を下回ると在庫の数を増やし、下回ると在庫の数を減らします。

    好景気では、商品を販売する企業は大量に商品を仕入れ、品切れが発生しないように商品在庫を保管します。

    仕入れの数が増えるということは商品の発注数が増えるということなので、商品を製造するメーカーの売上は増えますよね。

    結果として、労働者の賃金は向上し経済活動が活発になります。

    しかし、一定期間が経過してモノが売れれば「モノ余り」の状態になり売れなくなります。

    結果として、必要な在庫水準が減って仕入れ数が減るので、メーカーの売上が減り、労働者の賃金もへるので経済活動が収縮して「不景気」となるわけです。

    在庫変動に伴って、製造や物流業者、販売などに関わる働く人の賃金の向上・低下で景気循環がおこることから、在庫循環(インベントリー・サイクル)とも呼ばれています。

    この在庫変動がたいたい数年ごとに起こることから約40ヶ月を1つの周期とされます。

    季節性サイクルとは?

    季節性サイクルとは、1年単位の季節要因で一定の方向に動く周期のことです。

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    あらゆる市場は季節性サイクルの影響を受けるんだ。

    例えば、先物の穀物市場であれば収穫時期に共有量が増えて下落トレンドになるし、アメリカ株であれば5月前後に高値をつける傾向にあります。

    季節性サイクル傾向の一例
    • 大豆(先物)…4月〜6月に天井
    • 銅(先物)…3月〜4月に天井
    • 石油(先物)…10月に天井
    • アメリカ長期国債…1月

    それぞれ需要と供給といった明確な理由があってサイクルを生み出すので、初めてトレードする市場では季節性サイクルを分析したうえで、エントリーしましょう。

    サイクル理論はテクニカル分析と組み合わせると最強

    サイクル理論は、相場の環境認識に最適な手法です。

    ファンダメンタルズ分析に近い考えもありますが、テクニカル分析と組み合わせることで精度を上げるのに役立ちます。

    サイクル理論を活用する時、インジケーターと組み合わせてトレードするようにしましょう。